【実話怪談】恐怖の検問、近寄る警察官~宇治田原町山中(2000年代)

昭和京都の怪談綴りによる深夜の峠道で警官に遭遇する伏見七狐

宇治田原町山中、幻の交通取締り。

交通取り締まり検問は、違反が多く見受けられる道路なんかで行われますよね。
しかし時々「まさかあんな所で取り締まっているとは」といった話は耳にしませんか?
今回はひと昔前、京都南の山奥・宇治田原町で多くの人が体験して、小さな範囲でちょっとした都市伝説になったその怖い話を綴ってみます。

1.深夜の峠道に現れた警察官

真冬の早朝5時前。

その日、夜勤を終えた彼は車で自宅に向かっていました。
真冬とあって、この時間でもまだ空は真っ暗です。

職場から彼の家までに、京都南部の長い峠道があります。
携帯電話の電波も届かないような峠で、街灯すらありませんので
普段は車のヘッドライトだけを頼りに、慎重に運転します。

しかし逆にこんな時間、こんな峠で、他の車とすれ違うこともほとんど無いわけです。
通勤で慣れた道ということもあって、危険なことに彼はその峠道で速度を出していました。

昭和京都の怪談綴りによる深夜の峠道を走る車


そして道路が狭くなる中腹辺りに差し掛かります。

下り坂でカーブしたその時、ヘッドライトの先に人が飛び出してきました
彼は慌ててアクセルペダルから足を離して減速しました。

その人は、目の前に飛び出したというわけでもなく、距離的に余裕のある辺りに飛び出していたので、急ブレーキを踏むような危険な事態ではありませんでした。
ただ、こんな深夜の峠道で人が前にいたという事に驚き慌てたわけです。

飛び出した人は、こちらへスタスタと歩いてきます。
運転席の横まで来て窓をコンコンと叩くその人は、なんと警察官でした

彼はまだこの時点では、まさか自分が怪談の世界へ踏み込んでいるとは思っておりません。

 

2.奇妙な警察官の検問

速度を出し過ぎていたという自覚があった彼は、後悔しながらパワーウインドのスイッチを押して検問に応じます。
すると警察官は、なぜか何も言わずに彼の車を手信号で誘導しはじめました。

誘導先には、ヘッドライトの光の先に見える側道の少し膨らんだスペースにパトカーが2台停まっています。
その2台のパトカーの前に、丁度1~2台程度は停められるようになってました。
彼はしぶしぶ警察官の誘導に従い、そのスペースに停車させました。

京都府警は特に取り締まりが厳しいので素直に認めるしかないと思った彼は、すんなりと手続きを済ませようと考えました。
警察官は車の前に立ち、停車の合図をしているのを確認して、サイドブレーキを引き、エンジンを止めます。

免許証と車検証を取り出して、パトカーの方へ行きます。
車から降り、ドアをバタンと閉めた瞬間。


彼は「あること」に気がつき、背筋がゾクッとしました。

3.暗闇の恐怖

よく考えてみると、警官はカンテラどころか、懐中電灯や電飾の類いなどを一切付けていないのです。
暗闇での検問などと、夜間の取り締まりにおいてそんな馬鹿げた話はあり得ません。
嫌な予感を振り切り、顔を上げてみると、そこには。。

なんと今まで目の前にいたはずの警察官はいませんでした。

彼は驚いてパトカーの方を見ると、そこにはパトカーなど停まっていません。

ただ、耳がキーンとするほど静かな暗闇の峠があるだけです。
彼はこの時点で怪談の世界へ紛れ込んでしまったことを自覚したことでしょう。

説明の付かないこの状況に、頭からサーっと血の気が引いていくのを感じながら、震える手でドアをあけて車に乗り込み慌ててエンジンを掛けます。

サイドブレーキを解除して、車を出そうと前を見ると、、なんとまた警察官が誘導しているのです。

うわああああ!

彼は半狂乱で、警察官を避けて逃げました。
それこそ血眼で周囲をキョロキョロと確認しながら車を飛ばします。

なんとかオレンジの街灯が設置されている道まで出てきて、道路の周囲に住宅街も出てきました。
まだ暗い時間とは言え、峠を抜けた安堵で彼は少し落ち着き、速度を落とします。

タヌキにでも化かされたんかな。。

彼がそう呟いた、次の瞬間でした。

飛ばすなや

その声は、いきなり彼の耳元で聞こえました。
驚いた彼は「うわあ!」と叫んで急ブレーキを踏みました。
あまりの恐怖に、後ろを向くより先にドアを開けて飛び出して、道路へ転げ落ちました。

昭和京都の怪談綴りによる深夜の峠の車


腰が抜けた状態で車の方を見ますが、、車内には誰も乗っていませんでした。

4.奇怪な声の主

この辺りは日本でも有数の、狸が有名な地域です。
しかし狸が人を化かすなど、そんな童話のような怖い話が本当にあるのかはわかりません。

それとも実際、こんな峠道で取締りをしていた警察官の身に、なにか不幸な事故でもあったのでしょうか。
彼に「飛ばすなや」と訴えた声の主は、山を守る狸だったのか、正義感の強い警察官の霊だったのか、それは今となっては知るよしもない小さな都市伝説、実話怪談です。

5.京都の警察、宇治田原町の記録

お話はここで終わるはずですが、このお話に関しましては、娘の七狐と共に現地へ少し取材調査して参りました。
そして、京都のとある機関へ問い合わせを行いました。

話によると「過去に宇治田原町のその位置で交通取締りを行っていた事実はある」とのことでした。
ただ、何か事故があったかという話には、たどり着くことは出来ませんでした。
皆さんも、誰も見ていないからと車を飛ばしていると、尊い命を失い殉職された、正義感の強い警察官が見ているかもしれません。