心霊スポット、深夜の遊園地。
閉園後の誰もいない真っ暗な遊園地は、全ての遊具施設が停止した不気味な空間です。
生駒山におきましては、その近隣にも様々な心霊スポットが存在しており、その1つがこの生駒山上遊園地です。
その昔、昼間の楽しい生駒山上遊園地とは打って変わったこの空間へ侵入して、酷い目にあった高校生の話を綴ってみます。
1.奈良が誇る美しい天空公園「生駒山上遊園地」
かつての生駒山頂遊園地は、なんと閉園後に若者達が園内へ入り遊んでおりました。
当然ながらこの行為は違法であるにも関わらず、なぜ若者達は閉園後の遊園地に入っていたのか。
実はこれにはいくつかの理由がありました。
まず、当時から整備の行き届いた美しい遊園地だったこと。
公園のような感覚で利用出来る気軽さがあり、近郊の住民に親しまれておりました。
しかしこの「身近な公園感覚」が仇となり、「閉園後も普通に入れる」といった状態にありました。
次に、園内にはいくつか通電しなくても動かせる遊具がありました。
当事の若者達が夜中に侵入して、それらを公園の遊具感覚で使っても特に問題が起きなかったのかもしれません。
しかし私が高校生の時、身近でその「問題」は起きました。
2.深夜の遊園地で起きた事故
ある日校内で、他のクラスの生徒が入院したと話題になっておりました。
「T君が深夜に生駒山上遊園地へ侵入して、ジェットコースターから落ちた」
学科は違えど、時々遊びに合流するグループの奴でした。
私はその日の帰りに、友人達と見舞いに行くことになりました。
「おお、お前らありがとうな」
T君は片足を骨折しておりベッドに寝ていましたが、本人は元気そうに笑っています。
私の記憶では確か、T君は「ペダルを足で漕ぐモノレールのような乗り物」から落下したそうです。
なぜ落下したのか。
なんとそれは、調子に乗ってレールの上を歩いたのだとか。
そのあと警察や救急車が来て騒ぎになり、その行為はもちろん社会的に許容される物ではありません。
入院と同時に、T君は当然停学となりました。
皆が「なんでそんなバカなことをしたんや」などとT君を責めます。
だいたい話が落ち着いた頃に、T君は険しい顔になり声のトーンが変わりました。
「いやな、信じられへんと思うんやけど、お前らには本当の話をするわ」
ヤンチャではあった彼の行為は褒められた事ではありませんが、人の良いT君の真剣な表情に皆がシンとしました。
この時私達は、事実である可能性の高いその恐ろしい怪談を聞くことになります。
3.深夜の遊園地での狂った行為
落下事故当事の夜。
T君達は数人で車2台に分かれて生駒山頂遊園地へ行きました。
通電していない遊具に乗ったりと、皆で騒いでおりました。
そして「例の足漕ぎ式モノレール」に乗ろうという事になりました。
真っ暗闇で乗るそれは、さぞスリルがありそうだと考えたのでしょう。
しかしいくらこの時代でも、こんな大掛かりなアトラクションが動かせる状態で放置されているわけがありません。
やはり乗り物は留め具に繋がれ、歯止めされておりました。
もちろん、素人の学生ごときが簡単には外せません。
皆は諦めたのですが、なんとT君はモノレールの上を歩き始めました。
地上から数メートルの高さにあるモノレール、ましてや夜です。
女子は「危ないってー」と止めますが、男子は「いいぞいいぞ」と盛り上がる感じでしょうか。
皆の盛り上がりに調子に乗ったT君は、レールを這いつつどんどん進みます。
しばらく進んで振り替えると、皆のいる場所からだいぶ離れており、騒ぎ声も遠くなってきました。
T君はそのまま一周してしまおうと、這ったり歩いたりしながらレールを進みました。
夜の池や施設が下に見えて、すごく不思議な気分だったことでしょう。
まさかこの直後に、恐ろしい事故に会うなどとは夢にも思っていなかったわけです。
4.前から迫る恐怖
そして、おそらくはコースの中腹辺りには来ただろう時のことでした。
なにやらレールからコン、コン、と音が聞こえてきます。
おそらくこれは誰か逆回りして前から来ているな、と考えます。
コン、コン、コン、コン、
いよいよ音が近くなって、前方から人影が見えてきますが、暗くて誰だかわかりません。
T君は立ち上がって、前から来る奴を笑わせてやろうと、面白ポーズをとって構えました。
コンコンコンコン
なんと信じられないことに、前から聞こえる足音は走っているのです。
こんな危険なレールの上を走るなんて信じられない。
コンコンコンコンコンコンコンコン
次第に足音は早くなり、このスピードで来られたら危ないと思ったT君は叫びます。
「ストップストップ!俺ここや、ぶつかるぞ!止まれ!」
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
しかし足音は止まるどころか、異常なまでに速度を上げて近付いてきます。
5.迫る者の正体
いよいよヤバいと思ったT君は、逆方向へ進もうとUターンします。
後ろに振り返るその直前、前から来る者の姿が一瞬見えて、心臓がドクンとなりました。
そこにはなんと、ずぶ濡れの少年が水しぶきを散らしながらレール上を走って来ているのです。
こんな時間、こんな場所で、小学生くらいの少年がずぶ濡れでレール上を走っている。
「この世の者ではない」
ハッキリとそう感じたT君は、怖すぎて声も出ず、とにかく進んできたレールを戻ろうと必死で走ります。
落ちないよう慎重に這ってきたレールなのに、走るなんて正気ではありません。
しかし後ろに迫っている者は、どう考えてもこの世の者とは思えないので、T君は死に物狂いで走って逃げます。
もうすぐカーブという場所に差し掛かると、さすがに危なくて、冷静に状況を見ようとします。
すると、いつの間にか後ろから気配がなくなっています。
さっきまで聞こえていた少年の足音もしない。
そして、さすがにこの速度のままカーブは走り抜けられません。
カーブ手前でT君は少しずつペースを落としてみると、やはり後ろからの追っ手の足音も気配もないので、一端足を止めました。
そしてT君は息も絶え絶えで、後ろを振り替えってみました。
「今思えば、後ろを振り返らなかったら良かったのかもしれない」
T君は、そう後悔します。
振り返ったその目の前に、ずぶ濡れの少年がいました。
T君はそこから先は覚えていないそうです。
なぜなら、レールから足を踏み外して落下してしまい、そのまま気を失って友達が救急車を呼んだという顛末だったそうです。
T君は一体なぜそのような少年と遭遇したのか。
過去にこの施設で事故にあった少年の霊だったのか、あるいは遊園地創設よりも昔に何かあったのかは、今ではもう知る術もありません。
※警告
これは約30年前のお話です。
生駒山上遊園地は、現在も家族連れやデートスポットとしても地元で愛され親しまれている、国内屈指の天空遊園地です。
現在はセキュリティも厳重に完備されており、不法侵入者は法的に処罰されます。
また、危機管理も徹底されているため、ルールを守って正しく施設を利用すれば本記事のような事故に遭うことはありませんので、子供も安心して楽しめます。