【実話怪談】塀の穴を覗いた少年が体験する恐怖~伏見区(1980年代)

昭和京都の怪談綴りによる伏見の古い空家の塀に登る伏見七狐

伏見にあった、不気味な空き家。

もしその空き家へ引っ越す事になったら、これは相当怖いですよね。
しかし実際にそれを体験してしまった小学生が京都におりました。
伏見であった、その不気味なお話を綴ってみます。

1.塀の小さな穴

これは小学生の頃、京都の伏見に住んでいた私の友人タイチ君の体験した非常に怖い話です。

タイチは当初、小さなアパートに住んでいました。
そのアパートから小学校へ向かう通学路の線路沿いに住宅街があります。

昭和京都の怪談綴りによる伏見の踏切

そこに一軒の不気味な空き家がありました。

その古い空き家は、周囲の家とは異質な雰囲気を醸していました。
全体を高いブロック塀に囲まれていて中は見えず、二階の土壁と、正面の柵から玄関が見える程度でした。

昭和京都の怪談綴りによる伏見の不気味な古屋

しかしそのブロック塀には、一ヶ所だけ小さな丸い穴が空いていました。
タイチの身長では、背伸びをすればなんとか覗けそうな位置です。

タイチはいつもその穴を「覗いてみたい」と思っていました。
周囲の家とは何か違う雰囲気を放っている空家・・この壁の向こうはどうなっているのか、見てみたいのです。

しかし登校時はいつも登校班なので、まさか他人の家を覗くなんて事は出来ず、帰りには友達と一緒に下校するので、やはり覗けません。

1度、帰り道で友達に提案してみましたが、当然「人の家は覗いたらあかんで~」と却下されました。
そんな日常を送るうちに、タイチだけが「あの塀の中を見てみたい」という好奇心が日に日に膨らんでいきます。

 

2.危険な好奇心、覗く目

ある日、タイチは漢字テストが不合格になってしまい、不合格の数人と共に放課後に残されて漢字ドリルをやらされました。
漢字進級テストという物が京都特有だったのかは知りませんが、タイチの通っていた伏見でもあったようです。

タイチは頭が良い方なのですが、漢字が苦手なのと、なにせ文字を書くのが遅いので、一番最後になり下校時刻を過ぎてしまいました。
いつも帰る方向が同じクラスメイト達も先に帰っていたので、タイチは一人でトボトボと帰ります。

夕暮れも近いのに空は雲っていたので、かなり薄暗くなってきました。

昭和京都の怪談綴りによる薄暗い伏見の住宅街

少し小走りで家路に向かいますが、例の空き家の前でタイチは立ち止まりました。

そう、いつもと違い今日は一人です。
周囲をキョロキョロと確認しますが誰もいない、タイチ一人だ。

これは「あの塀の穴を覗いても誰にもバレないんじゃないか」と考えます。
穴の高さまで背伸びをして、さっと覗いて、何もなかったかのように立ち去ればいける。
遂にタイチは好奇心を抑えられなくなりました。

タイチはドキドキしながらその穴の下まで来て、誰も来ないか周囲を慎重に確認しました。
そしていよいよ、かかとを上げて、ずっと気になっていた穴を覗いてみると・・


なんと、中からも誰かが覗いていました。


昭和京都の怪談綴りによる塀の穴から覗く謎の目

うわあああ!

タイチは声を上げて後ろへ倒れた。
その瞬間です。

うわあああ!

なんと、塀の中からもタイチと同じく驚く声がしました。

タイチは腰が抜けてへたりこんだまま、塀に背中を付けて暫く息を潜ませながら耳をすまします。
しかし・・全く何の気配もなく、辺りはシーンとしています。

この時のタイチにとっては、これが霊の類による怪談であるという考えにはまだ至っておりませんが、穴を覗いた先に目があるというのは恐るべき怖い話です。

3.塀の中に居る者

中に誰か居るのは確かだ。
でも再び穴を覗くなんて、怖くて無理だ。

右手のほうにある玄関の柵から、何か確認出来るかもしれない。
タイチは塀に体をすり付けるように、足音を潜ませてジリジリと玄関の柵まで移動した。

しかし玄関前の門である柵には、南京錠が掛けてありました。
南京錠がかけてあるのに中に人がいるということは、誰か浸入している可能性があるわけです。
タイチと同じように、中が気になった子が塀を乗り越えて入ったのかもしれません。

辺りはどんどん薄暗くなってきて、実に気味が悪い。
中にいる者が何者であれ、怖いだけでなくさすがに危ない。
タイチはもう関わらずに帰ることにしました。

そして「中にいる者」に対して、「こっちはもうコソコソするのをやめたぞ!」というアピールをするかのように、胸を張って大きな足音を鳴らしながら歩きます。

そして、玄関前の門を横切ろうとした瞬間の事でした。

門を横切ると同時に、門の内側から青い顔がニュッと出てきました。

うわあ!

驚いたタイチは全力疾走で家へ向かいます。
しかしこの時、なぜタイチがここまでビビったのか。

それは、覗いてきた青い顔が、なんとタイチ本人の顔だったのです。

ここまでのお話で、ドッペルゲンガー的な怪談としては充分怖い話だと思います。
しかしこのお話は、ここからが本題となります。

 

4.不気味な家へ恐怖の引っ越し

私の知るタイチは、やたら気が強いとかってわけでもなく、しかしかなりのポジティブ思考で、悪い事があっても自分で消化出来るタイブの男でした。

小学生のタイチは、それは驚いた体験ではありましたが
自分に似た子がイタズラで塀の中に入っていた
持ち前のポジティブ思考でこう考えて消化していました。

それから数ヵ月経ったある日。

アパート暮らしだったタイチの一家は、一戸建てへ引っ越す事になりました。
そうです、最初に出したお話通り、なんと「例の家に引っ越す」という事になったわけです。

タイチにとっては心霊スポットに住むのか、というほどの恐怖の引越しです。
しかしあいつの性格なので、「タイチ、一戸建ての家だぞ」と、嬉しそうに話す両親に水を差せなかったのです。

タイチの中にあった「不気味なあの家」という怪談の記憶は自分の胸にしまって、家族と一緒に「マイホームを喜ぶ」という流れに乗りました。
まだ小学生だったタイチ、私はこれ相当に偉いと思いました。

いざ引っ越す準備となると、なにせ近所にあるので、荷物を入れる前に家族で何度か足を運んで掃除したりと、タイチも「不気味な家」の印象は薄れて、いよいよ引っ越します。

住めば都と言いますが、一戸建てを初めて経験するタイチ一家の希望に満ちた新生活が始まりました。

5.家の中を覗き込む何か

新生活が始まって暫くしたある日の夕方。

タイチは家に帰ると、両親はまだ帰っていませんでした。
外は雨が降りそうに薄暗くて、シーンとしていました。
晩御飯までにはまだまだ時間があるので、何かお菓子でも食べようとキッチンへ。

すると、庭のほうから何か物音がしました。
猫でも入って来たのかと思い、リビングから庭を見ても特に何もいません。
なぜか気になったタイチは、リビングからサンダルを履いて庭へ出ました。

庭と言うほどの広い敷地ではありませんが、家を一周囲む高いブロック塀があります。
家とブロックの間をぐるっと一周回ろうとしたタイチの目に「例の穴」が入って来ます。

そう言えばこの家に引っ越してくる前に、この穴を覗いたら中に子供の侵入者がいたなぁ、などと思い出しながら、何気にその穴を除き混むと、なんとそこには・・


家の中を除き込む目がありました。


昭和京都の怪談綴りによる覗く目の再来

うわあ!

タイチはびっくりして、後ろへひっくり返ります。

しかし、ここはタイチの家です。
覗いていた奴を怒鳴りつけてやろうと、すぐさま凄い勢いでジャンプして、塀をよじ登り、さあ怒鳴りつけてやろうと下を見ると・・なんと、そこには誰もいません。
塀の上に立って周囲を見渡しても、人の気配は全く無くシーンとしていました。

あの日の怪談の記憶が蘇り、ゾクッとしましたが、家には自分しかいないのでタイチは気をしっかりと持ち直しました。
そしてすぐさま庭へ飛び降りて、玄関の門へ走ります。

門の横まで来たところで、乱れた呼吸を整えて、門に手を添えます。
そして恐る恐る外を除き込むように、首をニュッと伸ばすと、そこには・・


タイチと同時に、外から除き込む顔がニュッと出てきました。


この時、あまりの怖さに意識がホワイトアウトしたそうです。

 

6.ドッペルゲンガー

もしこれが夢だったとしても相当怖い話ですが、夢の方がまだマシではあります。
しかし残念ながらタイチがお母さんに起こされたのは、玄関前だったのです。

私はちょっとこの話を聞いた時に違和感があったので、タイチに以下のような質問をしました。

よく漫画やドラマなどの中で「気を失った」などという都合のいい表現は使われます。
しかし実際にそのような場面を身近では見かけません。

特に貧血症でもないタイチが「なぜホワイトアウトするほどに驚いたのか」と聞いたのです。

するとタイチは一言で即答しました。

やっぱり自分の顔だったんだよ

タイチが見た自分の顔、これはいわゆるドッペルゲンガーだったのでしょうか。
もしくは、塀を介して、過去と未来が繋がっていたのでしょうか。

伏見という地域は、京都の中でも特に霊験あらたかな地域と言われております。
国内でも非常に有名な伏見稲荷大社があり、神の居る場所のようなイメージが強いですが、その分このような恐怖体験談などももたくさん存在します。