【実話怪談】竹薮から出られなくなった少年~八幡市(1980年代)

京都府八幡市の不思議な竹薮で起きた実話怪談


異界と繋がる八幡の竹藪。

京都でも竹薮で有名な八幡市には、大なり小なりの不思議な怪談が多数ございます。
「おかしいと思ったら、印を切るんやで」
幼い頃から祖母にそう教わった少年が体験した、その心霊現象を書き綴ってみます。

1.竹薮を開拓した街の怖い小道

京都の八幡市には、国内でも指折りの巨大な団地があります。
この団地は、竹薮を開拓して建てられております。
そのため開拓した当初は、端の方の棟になるとまだ開拓されていない竹薮が隣接しておりました。

そしてこの竹薮にはコンクリートで舗装された小道があり、団地に沿って続いています。

京都府八幡市の不気味な竹薮の小道

これは居住者が歩いて移動できる範囲を増やす、利便性を考えて作られた物でした。
しかし夏にはマムシなどが出るので、子供は通らないように注意を呼び掛けていました。

ただし、明確に「通行禁止」ではなかったので、私もよく友達と通っていました。

京都府八幡市のやばい竹薮から見上げた空

とは言いましても、この通路は昼でも暗くて怖い小道という認識であり、歩いて通ることはなかなかありませんでした。
こういった場所というのは怪談の噂もよく出る物で、ましてや一人で通るときは必ず自転車に乗っておりました。

 

2.八幡の竹薮に1人で入る少年

この八幡の竹薮に、友人のタカフミが一人で入った時の話です。
彼は木登りが得意な、典型的な野生児でした。

普通の子なら一人で竹薮に入る事はありえないのですが、タカフミにとっては庭のような物です。
怖い話ですが、通路から外れて竹薮の中まで入って行くような子でした。

ある日曜日の朝、タカフミは昆虫を採りに自転車で竹薮の小道へ入りました。
かなり奥まで入って自転車を小道の端に寄せて停めます。

京都府八幡市のやばい竹薮

タカフミは虫を手で捕まえるので、虫かごだけを持って竹薮に入りました。
道の無い道、獣道のような足場をザクザクと進みます。

3.奇妙なおばさん

来た通路はもう見えなくなる程度に奥へ入ったところで、人を発見します。

どうやら農作業用のモンペを履いた、おばさんのようです。
腰を屈めて、何かの作業をしているようでした。

八幡市のやばい竹薮にいた怪しいおばさん

こんな場所で知らない大人に近寄りたくはないので、タカフミは離れた場所で昆虫を探すことにしました。
一度通路へ出て、自転車に戻るために振り返り、そのまま来た道を戻ります。

その時でした。

タカフミはギクッとして、おばさんを二度見してしまったのです。
なぜなら、何気なくチラ見したおばさんの横顔が何かおかしいと感じたからです。

そして、二度見した瞬間、おばさんもこちらを向いてきました。
タカフミは咄嗟に「見てないフリ」をするかのように、首をくるっと回します。

しかし二度見した時に「ある違和感」が確かな物だった事を知ってしまいます。

京都府八幡市のやばい竹薮にいたおばさん

おばさんに顔が無かった

タカフミはそんなバカな話があるわけがないと思いました。
しかし奇妙な事に、横顔まで見えたおばさんには顔が無かったのです。

顔がないおばさん

おばさんは何かの病気を患って、皮膚が通常とは異なる状態なのかもしれません。
しかし一人の少年にとって、このような場所でこのような状態に遭遇するというのは実に怖い話です。

タカフミはバクバクと高鳴る心臓と、荒くなる呼吸で自転車の方へ向かいます。
恐怖で走ることは出来ず、早歩きでフラフラと進みます。

 

4.小道に戻れない

怖くて周囲は真っ白になって、足はガクガクしていた、と言います。
いわゆる「腰が抜けそうな状態」だったのでしょう。

タカフミは足元だけを見ながら必死で来た道を戻ります。
逆に言うと、焦るあまり足元以外の景色が白くなってしまっているわけです。

しかしなぜか、なかなか置いていた自転車にたどり着きません。
それほど大きな竹薮でもないのに、もうかなりの距離を歩いています。

おかしい、そう感じ始めた頃に、急に背後から声がしました。

あんた!

タカフミはびっくりして、膝をガクガクさせながら、前のめりに地面へ手を着きました。
おそるおそる後ろを振り返ると、なんとさっきのおばさんが立っています

タカフミは驚いて「うわあ!」と叫んでのけ反りました。

5.優しいおばさん

ところが、おばさんはタカフミにとって意外な態度をしてきます。

ぼく、大丈夫かい?

おばさんはタカフミを起き上がらせて、服に付いた泥を払ってくれました。
どうやらおばさんに顔が無いと思ったのは気のせいだったようです。
タカフミの目の前にいる人は、普通に作業をしていたおばさんでした。

タカフミはおどおどしながら、おばさんにお礼を言って去ろうとしました。

ところがです。

よく見ると今居る場所は、先ほどおばさんが作業をしていた場所だったのです。
タカフミはかなりの距離を歩いたにも関わらず、同じ場所なのです。

更によく見ると、竹薮の隙間から、自転車を置いてきた通路が見えています。
自転車の場所はそのくらいに近かったのです。

タカフミはこの時、「自分は今おかしな体験をしている」とハッキリ自覚しました。
そして、祖母に教えてもらっていた事を試そうと考えました。

 

6.心霊現象に向かって印を切る

心霊現象のようなこの状況に、タカフミは祖母に言われていた言葉を思い出します。

おかしいな、と思ったら印を切るんやで

右手の人差し指と中指を、左手で握り、刀を抜く要領でシュッと指を抜いて前へ出して「帰りなさい」と言います。
これは魔除けのおまじないの一種で、宗教や地方により様々な手法があると言われております。
おそらくは心霊現象に対処するため、九字切りなどが簡易的に民間へ伝わった物でしょうか。

タカフミは自転車へ向かって歩きながら、少し冷静になって現実的な感覚が戻ってきます。
それと共に、このあきらかにおかしな状況の「なにがおかしいのか」というのがハッキリとわかってきました。

そして祖母に教えてもらった通り、2本の指を握りしめて念じます。
指をシュッと抜きながら勢いよく振り返り、「おかしい対象」であるおばさんの方におまじないを向けました。

「帰りなさい」

しかしそこにはもう、誰もいなかったそうです。
おまじないが効いたのか、おばさんに化けた「何か」がもう去ったのかはわかりません。
ただタカフミは、不可思議な怪談の世界に迷い込んでいたのだけは確かなことだと言えます。

7.伝承に残っている話と心霊現象

この話で起きた心霊現象を総合して見ると、いわゆる「狐か狸に化かされた」といった、よくある伝承と一致しております。

つまりは狐か狸などが人間の少年を見つけて、イタズラを仕掛けた。
そして少年が驚いて倒れてしまったので、起き上がらせて汚れた服を払ってくれた。

いわゆる日本昔話、今で言うところの都市伝説の類ですね。
しかし当時、真剣に話す小学生のタカフミが作った話にしては実に細かく出来すぎていると感じ、これは恐らく実話怪談である可能性が高いと判断しました。

この話を聞いた当時の私も小学生であり、素直にめちゃくちゃ怖い話でした。
やはりしばらく竹薮に入るのは無理でした。

しかし今こうして文章に起こしてみると、人間を「からかってみたかった」何者かのイタズラの類ではないか、そのように思えてほっこりとした気分になりました。