【学校の怪談】恐怖!迫りくる「べたずる」~府下某小学校(1970年代)

昭和京都の怪談綴りによるべたずるというお話の校舎に居る伏見七狐



都市伝説。


一斉を風靡した都市伝説に、「テケテケさん」というお話がありますね。
不幸な事故により、身体が真っ二つになり、死んだ事を自覚出来ていない霊でしょうか。
これはそのずっと昔、京都にあった生々しい学校の怪談を書き綴ってみます。

1.用務員さん

京都には、全国有数のマンモス小学校がいくつかありました。
当時の小学校にSECOMやALSOKといったセキュリティ会社による警備員巡回などはありません。

その小学校では、教諭の宿直制ではなく、雇われた用務員さんが「用務員室」にて住み込みをしておりました。
しかし、あまりに用務員さんがすぐに辞めてしまい、なかなか定着しなかった為に
この用務員制は、途中で無くなったと言われてます。
これに関して校内では、ある恐怖の噂話が飛び交いました。

その怪談が「べたずる」です。

用務員さんが夜中に学校を巡回していると、上半身だけで這いずる男に遭遇するといった、学校の怪談によくあるようなお話です。
中学、高校になるにつれ、私の中にあるその怪談は、オカルト好きが流したデマゴギーであるケースか、もしくは人づてにどんどん刷り代わり盛られたよくある偽の都市伝説の類だと考えるようになりました。

そして私が成人する頃には、よくある学校の怪談として、琥珀色の写真のように、記憶の奥へと消え去りかけておりました。
そんなある日のことでした。

 

2.本人のお話

地元のお店で働いていた、若かれし頃の私は、店主の友人達との会合にご一緒させて頂きました。
会場のお店に集まった面々は、商店街の人や地元の関係者ばかりでした。

その中に、店主の同級生のお父さんが来られていました。
店主は当時で40代後半で、その親世代となると60~70くらいのご年輩です。
このご年輩とお話をしていると、凄い事実が発覚します。

なんと、昔その小学校で用務員をしていた、との事でした。
これはやはり、記憶の彼方にあった「べたずる」の話を聞きたくなります。

彼は「やっぱり有名なんか」と苦笑いしました。
そして首を傾げるように、「3ヶ月も、もたなかったよ」と言う。

もたなかった」とはどういう事なのか聞くと、彼は「出たんだよ、あれは酷い」と言って、ゆっくりと話を始めてくれました。
そう、この都市伝説の出所である本人さんから、直接お話が聞けたのです。

※以降、ご年輩の彼を「用務員さん」と記載します。

3.夜の校舎に響く異音

彼がこの小学校の用務員だったのは、この時の約15年前です。
用務員さんが就任して、生活用品を用務員室に持ち込み、その日から早速、草刈りや清掃といった業務に取り掛かります。

下校時刻になり、生徒が帰り、職員室の電気も消えます。
用務員さんは残っている児童はいないか、靴箱などを見回ります。

そして校舎には誰も残っていないのを確認して、閉門します。
夕陽も沈み暗くなったので、お風呂を沸かして夕食を作り、用務員室の小さなテレビを見ながら食事をします。

すると、どこからか「パシーン」という音がします。

自分の生活音でわかりにくかったのですが、それはさっきから何度か聞こえていて
あまり気にしていませんでした。
しかし、今こうして落ち着いてからよくよく考えると、ここは一軒家ではなく、とても敷地の広い学校です。

そう、この音は校舎内で響いているのです。

用務員さんは、テレビの音を消して耳を澄ました。

パシーン

昭和京都の怪談綴りによるべたずるというお話の用務員室


明らかにドアの向こうの廊下に響き渡っているこの音は、校舎内のどこかに侵入者がいる可能性があるわけです。

猫や鳥、ネズミなどの小動物ならばまだいい。
しかし万が一、これが人間だったら大変です。

ゆっくりしていた用務員さんは気を引き締めて、備え付けの懐中電灯と木刀を握り、廊下へ出ました。

昭和京都の怪談綴りによるべたずるというお話の校舎内


仮に人間だった場合は、侵入者と出会ってしまうのは非常に危険です。
諦めて学校から出てくれる方が優先なので、校舎の照明を付けて回り

この学校には管理者がいる

という事を侵入者に知らせる手段を取ります。
そしてもし人影を確認次第、警察へ通報します。

まずは、用務員室や職員室のある第一校舎。
一階から三階まで階段にある電気のスイッチをオンにしました。

おそらくは、これで侵入者には伝わっているはずです。
身を潜めるか、学校から逃走していくはず。
そう思いながら、三階の渡り廊下から第二校舎へ向かっていると

パシーン

謎の音は、ハッキリと校舎に響きました。
しかし逃げていないということは、人間ではなく猫などの仕業だと考えられます。
一応は、第二、第三校舎の電気をつけますが、結局は音の正体は掴めず、小動物か何かの仕業だという結論に収まりました。

それからこの音は時々、夜な夜な聞こえてくるのですが、用務員さんはさすがに慣れてきて、この廊下に響く音は生活音のような物だと気にしなくなりました。

 

4.異音の正体

そうして就任から3ヶ月が経ったある日。
用務員さんは、いつものように夜の見回りをして、いつも通り異常はなく、用務員室に戻って就寝につきました。

その深夜のことです。
用務員さんは、大きな物音に目を覚まします。

パシーン

また廊下から例の音が聞こえてきます。
この音には慣れて、あまり気にも止めていなかったのですが
今日は何やらいつもと様子が違うのです。

パシーン

パシーン

パシーン

パシーン

その音が、一定のテンポを刻み始めました。
用務員さんは起き上がり、早足で廊下へ出て、音の元へ向かいます。
第三校舎の方だ

昭和京都の怪談綴りによるべたずるというお話の校舎


ずっと聞こえてくるので、さすがに特定出来ました。
第二校舎を越えて、渡り廊下へ出たところで「この近くだ」と思い、懐中電灯をあちこち向けていると、、
第三校舎の壁に、「動く物体」が視界に入りました。

そして用務員さんは自分の目を疑います。

なんと、真っ暗な校舎の上から人が落ちてきているのです。

5.迫りくる恐怖

渡り廊下からは、靴箱の建物があり、一階の地面が見えないのですが、おそらくは地面に人が落ちて「パシーン」と鳴り響いてます。

更にまた人が落ちてきて、「パシーン
また人が落ちてきて、「パシーン

用務員さんは、当然狂ったように用務員室へ走ります。
この恐怖の事態にどう対処していいやら分けがわからず、とりあえずは警察へ電話しようと考えました。

夜の渡り廊下を走り抜けて、用務員室のある第一校舎の手前まで来たところで、用務員さんの耳に異音が飛び込みました。

べちゃ!

その音は、目前にある渡り廊下の先にある廊下に響いています。
用務員さんは、足を止めて硬直しました。

というよりも、迫る驚異から全速力で逃げてきた人間の目の前に新たな驚異が前方から迫っている状況となると、腰を抜かして硬直し、もはや何が起きるのか見守るしかありません。

べちゃ!
ずるずるずる
べちゃ!
ずるずるずる

その何かが、どんどん迫ってます。

べちゃ!
ずるずるずる
べちゃ!
ずるずるずる

そして、とうとう渡り廊下からその何かが見えました。
なんと上半身だけの男が、腕で身体を引きずっているのです。
用務員さんは叫ぼうとしますが、あまりにも恐ろしすぎて過呼吸のような状態になり、視界はホワイトアウトして気を失いました。

 

6.周囲の異様な態度

用務員さんがハッと気がつくと、そこは用務員室の寝床でした。
まあこれは全て夢だった、という夢オチ怪談だった、ということです。
なぁんだ、と思いながらも私はふと素朴な疑問が浮かび、用務員さんに投げます。

でもなんで辞められたんですか?

私がそう聞くと、用務員さんはふーっと溜息をついて言いました。

誰もほんまの事を話してくれへんねん
ほんまの事って、何ですか?
ワシな、実は覚えとるねん
覚えとる、、とは、、?

覚えとるねん、あの朝方、先生方に用務員室に運ばれたんや

つまり、先生方に運ばれた用務員さんはいつも通りの用務員室の寝床で朝を向かえました。

見回りに使った懐中電灯がちゃぶ台の上にあるが、置いた覚えはない。
そう、先生方に運ばれたのは夢ではなかったわけです。

ところが、運んでくれた先生方は誰も用務員さんにその話をしてこなかったどころか、廊下でどの先生に出会っても、いつもと変わらず挨拶や軽い世間話をして通り過ぎます。

異様に感じた用務員さんも、あえて誰にも質問しなかったら、その日は誰も「廊下で倒れていたので運びました」や「具合は大丈夫ですか」などとは話してこないまま終わったそうです。

用務員さんを運んだ先生方は、何かを隠していたのでしょうか。

それとも・・・