京都で一番有名な心霊スポット、清滝トンネル。
京都には、心霊スポットとして有名なトンネルがいくつか存在します。
その中でもちょっと洒落にならない怖い話が多数ある例のトンネル。
今回は地元民が夜は迂回して避ける、都市伝説としても京都で一番有名なあの清滝トンネルでの生々しい実話怪談を綴ってみます。
1.清滝トンネルの都市伝説
高校の時の事です。
仲間内で最初に車の免許を取ったタカヤという友人がいました。
当初、私達は毎晩のようにそいつの車でドライブしていました。
若者が車という手段を持つと、だいたいは「心霊スポットへ行こう」となります。
そしてやはり、この有名なトンネルにも行く事になりました。
「清滝トンネル」。
京都の山道にあるこのトンネルは、狭いために車1台しか通れません。
従いまして、信号による対面交互通行になっております。
昼間は観光の車もよく通りますが、夜になるとほとんど車は通りません。
そんな心霊スポットへ向かって、タカヤの車は私達を乗せて走ります。
カセットテープとCDプレイヤーの付いたカーステレオで、流行りの音楽をガンガンに鳴らしてました。
そして現地に近付くと、深夜の山道が恐怖を掻き立て、若い私達のテンションは上がります。
このトンネルには様々な都市伝説が散見されますが、当時の私達が聞いていた噂は、以下の3通りでした。
①トンネルの中腹まで行き、ヘッドライトを消してクラクションを鳴らすと霊が現れる
②深夜1時過ぎに赤信号の時に浸入すると、カーブの先に霊が現れる
③入り口に到着した時点で青信号だった場合、そのまま浸入すると霊に会う
まず、いくら若い私達でも②は危険なので無理だと言うことになりました。
トンネルの中腹がカーブになっているため、出口側が見えません。
いくら交通がほとんどない深夜とは言え、対面側は青信号なのに車を進入させるというのはさすがに道交法違反であり、非常に危険な行為です。
ということで、到着した時に青信号ならそのまま入って行くということになりました。
そして、いよいよ問題のトンネルが近付いてきます。
「うわ!青や!」
運転していたタカヤが声をあげると、皆がビクッとして前を見る。
暗闇に、ポワンと青い光が見える。信号機の青色です。
「どうする!?どうする!?」
慌てて皆に聞くタカヤ。
間口の狭いトンネルの中から、不気味に赤く光る薄暗い照明。
そのトンネルはどんどん近付いてきます。
2.清滝トンネルへ入る
皆で「行け行け!」とタカヤをせき立てました。
タカヤはブレーキを踏んだり、車をカクカクさせて
迷いながらも車はそのまま清滝トンネルへ入って行きます。
まるで乗り物で入っていくタイプのお化け屋敷みたいなスリルです。
トンネルへ入るとタカヤはカーステレオを切ったので、より怖くなってきました。
車幅は左右いっぱいの狭さに加えて天上もかなり低い。
不気味なことに、まるでブレーキランプのように真っ赤な照明で、古いためか薄暗い。
この今まで体験したことの無いような緊張感に皆は体をすくめて黙り混みます。
タカヤは自転車くらいの速度で車を進行させます。
数百メートル程度の距離ですが、トンネルの中腹がカーブになっているため出口側が見えません。
そのため、皆の恐怖心はそのカーブに集中しています。
「うわうわうわ、きたきたきた!」
「着くぞ、カーブ着くぞ!」
そのカーブに来たところで、なんとタカヤは車を停めた。
「ええええ!?」
「おい、なに止まってんねん!」
「いや、あれを試してみよう」
3.都市伝説への無謀な試み
そうです、タカヤは都市伝説のもう1つの噂「ヘッドライトを消してクラクションを鳴らす」を試そうと言うのです。
タカヤがヘッドライトを消すと、薄暗く血のように赤い照明だけがトンネルの壁を照らしています。
「うわあ、これやばいって」
「もう絶対出るやん」
口々に喋って恐怖心をごまかそうとしますが、このような行動をしている時点で実際本当に怖かったです。
「よし、鳴らすぞ」
タカヤがそう言うと皆が黙り、車内はシーンとします。
パァァァァン!
タカヤ自慢の大きなクラクションが鳴り響く。
暫くみんな黙りながら、車内から赤いトンネル内をキョロキョロと見渡します。
「何も出ないな?」
「ほんまや、出ないな」
そう言いながら、車を発進させました。
そのままゆっくりとトンネル反対側の出口から車は出ました。
そしてUターン出来る所まで車を走らせてトンネルを引き返しましたが、結局何も見えませんでした。
しかしトンネルを出たところで、異変が起きました。
4.徐々に迫る恐怖
「あれ?カーステが付かない」
これはタカヤの嘘ではないかと思い、私も操作してみたのですが、実際カーステレオは何をやっても動きませんでした。
呪いかなにかではないかとも話しになりましたが、たまたま壊れたのかもしれないとしてそのまま帰路に着きました。
そして「電気が真っ赤とか、気持ち悪いトンネルだったなあ」などと話ながら車を走らせます。
私達を乗せた車はそのまま来た道を戻り、山道を抜けて町へ入っていきます。
町の交差点が赤信号で停まり、サイドブレーキをかけてタカヤは後部座席の方を振り返る。
一言、「怖かったなあ~」と言ったその瞬間、いきなりバアン!と、車内に鳴り響きました。
皆が一斉に後ろを振り返ります。
まるでリアウインドを平手打ちで殴ったような音がしたのです。
あまりの驚きに、狭い車内で全員の大きな叫び声が重なった。
しかし周囲を見渡す限りでは、リアウインドどころか車の周囲には誰もいないどころか、何もありません。
そしてタカヤが「なんや今の?」と言った瞬間、壊れていたはずのカーステが大音量でなり始めました。
一瞬皆が叫び声を上げてパニックになりましたが、タカヤはカーステの音量を下げます。
この状況はもはや恐怖でしかありません。
しかしにタカヤは今明らかに自分の車を叩いた音の主を確かめに、車の外へ出ました。
5.恐怖が確信に変わる瞬間
「誰もおらへんわ」
車の周囲は、そんなすぐに隠れるような場所もなく、何かが逃げた気配も全くありませんでしたのでなにか物が落ちてきて当たったのではないか、と、みんなで車を降りて周囲を探しました。
そのうち、1人が異変を見つけました。「窓になんか付いてるぞ!」
リアウインドには、ベッタリと手形がありました。
綺麗な車窓を思いっきり平手打ちすれば、ちょうどこういう形が付くであろう手形です。
気持ち悪くて、タカヤはすぐにウエスで拭き取りました。 私が直接体験したお話は、ここまでとなります。
しかしここまでで起きた事は、完全な霊体験的な確証はなく、「恐怖」という精神状態にあった私達に、偶然が重なった体験とも考えられます。
しかし本当に怖い話は、この後日のことでした。
6.清滝トンネルの赤い記憶
数日後、タカヤと私はそのトンネルの近所の地域に住む友人シンジと会ってました。
タカヤと私はトンネルで体験した怖い話を、いかにも実話怪談らしくちょっと盛りながらシンジに話していました。
でもなぜかシンジは妙に首を傾げながら、何かを言いたそうに私とタカヤの話を聞いてました。
私は疑問になり、夢中で語るタカヤを制止して聞きました。
「シンジどうしたん?」
そしてシンジが言ったその一言に、私達は凍りついた。
「いや、清滝トンネルの照明って、普通に街頭の黄色っぽい色やで?」
そうです、よく考えてみると照明が赤いわけがありません。
ブレーキランプのような赤だったのに、「古い施設はこういう物だろう」などと、なんとなく納得してしまっていたのか、誰もそこに気が付きませんでした。
私達は一体、どこを走っていたのでしょうか。
こういった都市伝説はたくさんあれど、このトンネルに関しては今でも類を見ないほどに多数の逸話が残されております。