棲みつく何か。
皆さんの地元にも、「入れ替わりの激しい店舗」ってあるでしょうか。
そういった物件というのは、当然いい噂は回らない物ですが・・中には、地元民しか知らない怖い話なんかが都市伝説化するものです。
これは中学時代のクラスメイトが体験した、いわゆる死神的な者に襲われた怖い話です。
今回は京都近郊の街で起きた、その恐ろしい実話怪談を書き綴ってみます。
1.良くない噂のある店舗の二階
立地条件が最高だと思われる枚方市のその大通りには、1店だけコロコロと変わる二階建てのテナントがありました。
中でも1度、テレビで紹介された店があるほどに良い場所でした。
休日には行列が出来るほどに盛況だったその店も、なぜか開店から僅か数ヵ月で閉店しました。
地元や京都近郊では、既にそのテナントには変な噂がいくつか挙がって、ちょっとした話題になっておりました。
それと言うのも、この店が入る更に前に、某大手ファーストフード店が開店しました。
しかしこの店などは、なぜか僅か数日で閉店したという、事故レベルの話もありました。
ある店の開店日に、この店の店員だけでなくFC、MDなどの会社幹部までが二階に集まり記念撮影をします。
そして現像された写真には、見るからに一般的に考えられているような、いわゆる「死神」のような姿が、かなりハッキリと写りこんでいた、という話が都市伝説的に回りました。
しかしさすがに大手企業が、そんなオカルティックな事で閉店するわけがない。
これに関してはあくまで関係者に近い人間に確認したわけではなく私も噂で聞いただけで、真には受けておりませんでした。
怪談や怖い話が好きな私ではありますが、死神などと言われましても、ちょっとおとぎ話や神話のような物はさすがにリアリティに欠けると言いますか、どうもピンと来ませんよね。
でもそれは、少なくとも「あの事が起こるまでは」です。
その 噂の真相は分からないままでしたが、バブル絶頂期の当時、賑わう大通りの中でそのテナントには暫く入居がなく、不自然に「テナント募集中」の貼り紙がある状態でした。
2.アルバイトYちゃん
時は流れて、数年後。
私が成人する頃に、例のテナントにまた大手ファーストフード店が入ったという話を友人から聞きます。
それも、私が京都の中学に通っていた時代のクラスメイトで、Yちゃんという子が「バイトしていた」とのことでした。
まだ開店したばかりなのに「していた」ということは、すぐに辞めたということです。
当時のバイト初日。
オープニングスタッフとして入ったYちゃんは張り切っていました。
休日だったので店は想定を超える盛況っぷりで行列となり、新人アルバイトでは追い付かず、キッチンは正社員や幹部まで、開店式に駆けつけていた本社スタッフまでもが稼働し始めました。
3.襲い掛かる二階の死神
新人アルバイトのYちゃんは、社員さんに二階から紙コップや紙袋といった資材のストックを持ってくるよう言われます。
店は住居店舗の作りになっていて、二階へ上がるには靴を脱ぎます。
京都近郊はそうであった、というわけではなく、昭和時代の住居店舗はこのような形式が主流でした。
Yちゃんは靴を脱ぎ、トントンと階段を駆け上がります。
最後の段に差し掛かった時に、足首に違和感を感じました。
何かに足をすくわれた、、?
一瞬の出来事ですが、Yちゃんは階段に足を着地できず、つんのめった形になりますが
運動神経の良いYちゃんは、咄嗟に最上段に両手を着いて踏ん張り、転ばずに済みました。
Yちゃんが足元の階段を見ると、途中に書類やら資材が積んであるので、どれかが足に絡まったんだと階段を覗きます。
しかしそんな事よりも、頼まれた物を早く探さなきゃいけない。
Yちゃんは必要な物を慌てて揃えましたが、そこそこの時間が掛かってしまいました。
「Yちゃーん、まだかなー?」
一階から社員さんの声が聞こえます。
急いで一階の店へ持って行かなきゃいけない。
Yちゃんは両手一杯に資材を持って、階段を降りようとしました。
その階段に踏み出した1歩目の右足が、また何かにすくい取られた。
階段を踏むはずのYちゃんの右足は、階段へは届かず空を切る。
「またやってしまった、、」と思い、運動神経の良いYちゃんは素早く左足で床を蹴って、階段を数段飛ばして回避しようとします。
ここまでが、Yちゃん自身が冷静に判断したハッキリとした記憶でした。
ところがそのYちゃんの判断を裏切る事態になります。
なんと床を蹴ったその左足が、何かに取られた。
両足を取られては、さすがのYちゃんでも着地できません。
Yちゃんの体は勢いよく階段を転げ落ちます。
その時、一階から呼んでいた社員さんが階段の下まで来ていて、咄嗟にYちゃんを受け止めたのですが、Yちゃんはジャンプの勢いのまま階段を転げ落ちてます。
漫画やドラマのように「女子をスマートに受け止めるイケメン」とはいかず、凄いぶっ飛び方をしたそうです。
しかし社員さんのガタイは大きく、小柄なYちゃんの体をガッシリと受け止めて受身を取っていて、なんとか大事には至りませんでした。
幸い怪我は軽い傷で済んだので、2人とも絆創膏を貼ってそのまま仕事に戻ります。
4.死神という実話怪談の発覚
Yちゃんは腑に落ちなかった。
自分はそんな簡単に転ぶほど足元がおろそかなドジっ子でもなく、どうも人の手によって足首を掴まれたような気がしていました。
足首をギュっと握られた、というハッキリした感覚は残ってなくて、しかし足を滑らせたわけでもく、どう考えても「足が階段に着地するのを誰かに妨害された」という感覚はハッキリとあったそうです。
でも階段に誰かいたわけでもないし、そんなバカなことがあるわけもない。
これが怪談や怖い話だなどと考えている暇もないほどに、お店は大忙しで、次から次へと入るオーダーをこなしてるうちに、お客さんの数も落ち着いてきました。
初日の営業も終わり、助けてくれた社員さんが「お疲れ様、お腹すいたやろ?」と
ドリンクやポテトなどを持ってきて、Yちゃんの横に座ってきました。
社員さんは、小声でこう言いました。
「Yちゃん・・・両足掴まれてたやんな?」
・・その店も、長くは続いていなかったと記憶しております。
地元では色んなタイプの話が都市伝説的にあったこの店舗ですが、私達人間の価値感から見ると、明確な悪意のある何かが棲みついている、そんな印象が残ります。
余談:Yちゃんと枚方市のイケメンのその後
この実話怪談とは関係のない余談ですが、おそらくはちょっと気になると思いますので追記します。
私がYちゃんにこの話を聞いた当時、Yちゃんはこれをキッカケにこの社員さんと交際しておりました。
元ラグビー部ということで、なるほど納得できました。
Yちゃんは悪霊なのかキューピットなのかわかんないよ、と笑っておりましたが、ちょっと笑えないゾッとする怖い話ですよね。
現在2人はどうなっているのでしょうか、私も気になります。
もし地元友人に話を聞く機会があれば、またご報告します。